はじめに
生活福祉資金貸付制度は、生活に困窮する人たちに対して、金銭を貸し付けて生活を支える制度の一つです。
実施主体は都道府県社会福祉協議会で、相談窓口は市町村社会福祉協議会です。外国人は対象となるのかどうか、過去問題の解説を通して、制度の概要・対象を見ていきましょう。
この記事を読めば、これが分かる!
- 生活福祉資金貸付制度の概要
- 在日外国人支援を行う社会福祉士の役割等
参照した文献はこちら
第33回 問題104(社会福祉士国家試験 過去問題)
事例を読んで,在日外国人支援を行うX団体のA相談員(社会福祉士)によるBさんへのこの時点での対応として,適切なものを 2 つ選びなさい。
〔事 例〕
外国籍の日系人Bさん(45 歳,男性)は,半年前に来日し,Y社で働いていたが,1 か月前にY社が倒産し職を失った。今後の生活について相談するため,在日外国人支援を行うX団体を訪ねた。A相談員との面接では,以下のことを語った。母国では,今日まで続く不況により一家を養える仕事に就けず,家族の生活費を稼ぐため来日したこと。近い将来,母国で暮らす家族を呼び寄せたいと思っていること。現在求職中であるが日本語能力の低さなどからか,仕事が見付からず,もうこのまま働けないのではと思っていること。手持ちのお金がなくなり当面の生活費が必要なこと。なお,Bさんは在留資格(定住者)を有することを確認した。
1 一旦帰国することを提案する。
2 これまでの就労経験を確認し,働く上での強みを明らかにする。
3 生活福祉資金貸付制度などの仕組みを説明し,希望があれば窓口へ同行することを提案する。
4 日本語を学び直し,日本語能力を早急に高めることを勧める。
5 家族を呼び寄せることは無理であると伝える。
解説
正答:2,3
選択肢1:誤り
一旦帰国することを提案するのは、次のような理由で不適切です。
- 「家族を呼び寄せたい」というBさんの意向を無視している
- 当座の生活をしのぐお金さえなく経済的に困窮しているBさんに、帰国の費用が捻出できるとは考えにくい
- 帰国したとしても、母国は不況で仕事に就けず苦しい生活が待っている
選択肢2:正しい
これまでの就労経験を確認し、Bさんのストレングスに着目した支援は適切だといえます。
場合によっては、これらのストレングスが今後の求職活動において有利に働くかもしれないため、その内容を明らかにしておくことは適切だといえます。
選択肢3:正しい
生活福祉資金貸付制度とは、生活に困窮する人に金銭を貸し付けて生活の安定を図ることが目的です。
実施主体は都道府県社会福祉協議会で、相談窓口は市町村社会福祉協議会です。
同制度の利用には、国籍条項はなく、一定の条件を満たせば(例:償還能力、残りの在留期間等)利用できる可能性があります。
また、Bさんの日本語能力が不十分であることを考えると、支援者であるソーシャルワーカーが窓口に同行するといった支援は適切だといえます。
選択肢4:誤り
Bさんは日本語能力が不十分ではあります。しかし、現時点で日本語能力を高めるために時間をお金を使うのは適切とはいえません。重要ではありますが、緊急ではない事項です。
Bさんの現在のニーズは、当座の生活をしのぐための資金の確保です。このニーズの充足は緊急かつ重要な事項です。優先順位を考えれば、後者に関する支援が今のBさんには必要です。
選択肢5:誤り
Bさんの「家族を呼び寄せたい」という意向を無視した、突き離した言動です。このような言動はBさんとの信頼関係が損なわれるため避けるべきです。
実際、現時点では、家族を呼び寄せることは難しいかもしれませんが、Bさんの生活が安定した場合にはこれが実現できるかもしれません。
出典・引用
第33回 社会福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)

参考文献