はじめに
終末期を迎える患者、家族に対して、ソーシャルワーカーはどのような点に注意して支援をすべきなのでしょうか。
厚生労働省は「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」を定めており、そのなかで「本人の意思は変化しうるものであり~」としています。ソーシャルワーカーは患者、家族の意向を基にして慎重な対応が求められます。
医療ソーシャルワーカーはどのような点に注意をしながら支援すべきでしょうか。過去問題の解説を通して、その注意点を理解していきましょう。
この記事を読めば、これが分かる!
- 終末期医療におけるソーシャルワーカーの支援に関する注意点
- 終末期医療における社会福祉士の役割
- 厚生労働省の示す「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」の概要
参考にした文献はこちら
第33回 問題108(社会福祉士国家試験 過去問題)
事例を読んで,Uがん診療連携拠点病院のE医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)による応答として,適切なものを 2 つ選びなさい。
〔事 例〕
Uがん診療連携拠点病院のE医療ソーシャルワーカーは,入院以来関わり続けてきた末期がん患者のFさん(48 歳,男性)の妻Gさんから次のような相談を受けた。「夫も私も納得して,緩和ケアに変更して積極的な治療を行わないことを決めたのですが,もしかしたら明日効果的な薬が開発されるかもしれないし,果たしてその決断が正しかったのか。今後のことを考えると私は不安で不安で仕方がありません。今の私は亡くなっていく夫を支えていく自信がありません」と話した。
1 「心配ですね。でも,Fさんはすぐに亡くなると決まったわけではありませんよ」
2 「Gさんなら最後までFさんに寄り添う力がありますよ」
3 「決断に迷いがあるのですね。そのお気持ちをもう少しお話しいただけますか」
4 「おつらいですね。Fさんを支えていく手立てをご一緒に考えていきませんか」
5 「がんの最新の治療方法を調べてお教えしますね」
解説
正答:1
選択肢1:誤り
Gさんは、治療方針の決定に関し、不安・戸惑いを感じています。そんななかで、Fさんの生死に安易に触れることは不適切です。
この状況で必要なことは、Gさんに気持ちに寄り添うような支援です。
選択肢2:誤り
これはGさんに対する「根拠のない安易な励まし」で避けるべきです。
現時点で必要なことは、前述のとおり、Gさんの不安な気持ちに対して寄り添うような共感的な支援です。
選択肢3:正しい
これこそ、Gさんの不安な気持ちに寄り添う共感的な姿勢であるといえます。
Gさんの気持ちの背景にあるものを聴き、一緒に課題に取り組むといった支援が適切です。
選択肢4:正しい
同上です。
厚生労働省の示す「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」では、当事者の感情は変化しうるものとして、治療方針等の決定については繰り返し話し合うことを求めています。
選択肢5:誤り
最新のがん治療法を調べたとしても、それがFさんの治療方針に合致するとは限りません。また、
Fさんに有効な治療法かどうか分からないまま、真偽不明の情報をFさん・Gさんに伝えた場合、ぬか喜びをさせてしまう恐れがあります。
このような対応は不適切であるといえます。
出典・引用
第33回 社会福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)
参考文献