はじめに
労働者災害補償保険、いわゆる労災において業務災害または通勤災害に遭った労働者は、休業(補償)給付と休業特別支給金の給付を受けられます。これらはどのような違いがあるのでしょうか?
科目「保健医療サービス」の過去問題で、労災における休業補償給付・休業特別支給金に関する事項が出題されたため、これを取り上げて解説します。
この記事を読めば、これが分かる!
- 労働者災害補償保険の概要
- 休業(補償)給付、休業特別支給金の違い
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第33回 問題076(社会福祉士国家試験 過去問題)
事例を読んで,X病院のB医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)のCさんへの対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを 1 つ選びなさい。
〔事 例〕
Cさん(43 歳,男性)は,正社員として勤務する工場での仕事中に鋼板の落下によって頭部外傷を負った。救急病院で 1 か月の入院後,リハビリテーションの目的でX病院へ転院し 3 週間が経過した。下肢の片麻痺と高次脳機能障害があり,歩行のために下肢装具を製作した。CさんはB医療ソーシャルワーカーの下を訪れ,「労働災害として認められたが,今後の経済的なことがとても心配である。復職を含めたこれからの生活について相談したい」と話した。B医療ソーシャルワーカーはCさんの不安な気持ちに共感しながら具体的な情報を提供した。
1 Cさん宅へ職場適応援助者(ジョブコーチ)を派遣し,復職に向けた訓練ができることを説明する。
2 入院期間中は傷病手当金が支給されることを説明する。
3 装具購入費は,労働者災害補償保険法に基づいて勤務先の工場へ請求できることを説明する。
4 退院後の生活に備えて,介護保険の要介護認定の申請について説明する。
5 休業 4 日目以降の休業期間中は,休業補償給付に加えて休業特別支給金が受けられることを説明する。
解説
正答:5
選択肢1:誤り
職場適応援助者(ジョブコーチ)は、障がい者が職場に適応するのに困難さを抱えていたり、職場において障害の理解が進まなかったり等の課題がある場合に、職場に派遣されます。
職場適応援助者(ジョブコーチ)には、次のような役割があります。
選択肢2:誤り
傷病手当金は、公的医療保険に定められた制度です。
仕事を原因としないケガや病気を理由に仕事を休まざるを得なくなり、就労が困難である場合に、休業4日目から1年6ヶ月の間で、給与の支払いを受けなかった場合に現金が支給されます。
今回の出来事は、労働災害として認定されている事案であるため、公的医療保険は利用できません。
選択肢3:誤り
本件は労働災害として認定されている事案であるため、装具購入費は、勤務先へ請求することはできません。
正しい請求先は、申請者または技師など補装具業者が労働局に請求します。
選択肢4:誤り
Cさんは今回の事故・災害の後遺症として、下肢の麻痺と高次脳機能障害を抱えるようになりました。
ただし、介護保険サービスを利用するためには、16種類の特定疾病に罹患し、介護が必要な状態だと認定されなければなりません。
Cさんの後遺症は介護保険法の定める16種類の特定疾病に該当しないため、要介護認定の申請ができません。つまり、介護保険サービスを利用できないということになります。
もし、介護サービスを受給するのであれば、障害者総合支援法によるサービスを利用することになります。
16種類の特定疾病
- がん(がん末期)
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- パーキンソン病(パーキンソン病関連疾患)
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症(ウェルナー症候群)
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
選択肢5:正しい
休業4日目以降の休業期間中は、次の給付を受けられます。
- 休業補償給付
- 休業特別支給金
それぞれの違いは画像をご覧下さい。
出典・引用
第33回 社会福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)
参考文献