はじめに
住宅の確保が困難で住む家がない方たちがいます。彼らがもし、管理されていない空き家を占拠しても問題はないのでしょうか?
この記事では、科目「現代社会と福祉」の過去問題をとおして、住宅セーフティネット法の概要や、国の進める住宅施策、居住支援に関して解説します。
この記事を読めば、これが分かる!
- 住宅困窮者とはどのような人たちを指すのか
- 公営住宅の概要
- 公営住宅の入居条件例
参照した文献はこちら
第33回 問題030(社会福祉士国家試験 過去問題)
日本における住宅政策や居住支援に関する次の記述のうち、最も適切なものを 1 つ選びなさい。
1 「住宅セーフティネット法」では、民間賃貸住宅を賃貸する事業者に対し、住宅確保要配慮者の円滑な入居の促進のための施策に協力するよう努めなければならないとされている。
2 公営住宅の入居基準では、自治体が収入(所得)制限を付してはならないとされている。
3 住生活基本法では、国及び都道府県は住宅建設計画を策定することとされている。
4 住宅困窮者が、居住の権利を求めて管理されていない空き家を占拠することは、違法ではないとされている。
5 日本が批准した「国際人権規約(社会権規約)」にいう「相当な生活水準の権利」では、住居は対象外とされている。
(注)1 「住宅セーフティネット法」とは,「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」のことである。
2 「国際人権規約(社会権規約)」とは,国際人権規約における「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約」のことである。
解説
正答:1
選択肢1:正しい
住宅セーフティネット法では、民間賃貸住宅を賃貸する事業者に対し、住宅確保が困難で配慮が必要な人たちに対し、円滑な入居の促進のための施策に協力するよう努めなければならないとしています(第54条第2項)。
住居確保の要配慮者とは、次のような方たちを指します。
- 低所得者
- 被災者
- 高齢者
- 障がい者
- 子どもを養育する者等
選択肢2:誤り
公営住宅とは、県営団地や市営住宅等を指します。公営住宅は、地方公共団体が集合住宅を建設したり、借り上げを行ったりして、主に低所得者等に安く貸しています。
低所得者等がこれに入居して住む場所を確保し、経済的な安定を図るのが狙いです。
礼金や仲介手数料が要らない、一般賃貸住宅と比べて家賃が安く設定されている場合が多いため、低所得者等としては住宅確保がしやすくなります。入居者資格として収入基準等が設けられています。
選択肢3:誤り
住生活基本法では、政府は住生活の安定の確保、向上の促進に関する基本的な計画を定めなければならないと定められています。
住宅建設計画は、住宅建設計画法に基づいて定められていましたが、住生活基本法の制定に伴い廃止されました。
選択肢4:誤り
住宅困窮者であろうと、そうでなかろうと管理されていない空き家を占拠した場合、法律により罰せられます。不動産侵奪罪、住居侵入罪に問われます。
住宅の確保が難しい事情は気の毒ではありますが、だからといって他者の所有する住宅を不当に占拠してよいということにはなりません。
選択肢5:誤り
選択肢内にある「相当な生活水準」とは、ただ単に生命がある状態を指すのではありません。人として生きる、人間としてふさわしい程度の生活水準を指します。
人として生きるために、食糧・衣類・住居を持つ権利を与えられるべきだという考え方です。
出典・引用
第33回 社会福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)
参考文献
きちんと整理されているのでとても分かりやすく、効率よく覚えることができます!