はじめに
社会福祉法は、元々は社会福祉事業法が2000年に法律の題名を改正したものです。社会福祉の対象は様々でありますが、それぞれに提供されるサービスに共通する基本的理念を定めたものとなっています。
この過去問題を通して、社会福祉法への改正ポイント、障害者基本法、生活保護法、地域包括ケアシステムを解説しています。
この記事を読めば、これが分かる!
- 社会福祉法の特徴
- 生活保護法の目的 ほか
参照した文献はこちら
第33回 問題022(社会福祉士国家試験 過去問題)
社会福祉法で規定された福祉サービスの基本的理念に関する次の記述のうち,正しいものを 1 つ選びなさい。
1 個人の尊厳の保持を旨とし,その内容は,福祉サービスの利用者が心身ともに健やかに育成され,又はその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように支援するものとして,良質かつ適切なものでなければならない。
2 全ての国民が,障害の有無にかかわらず,等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重される。
3 国が生活に困窮するすべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,必要な保護を行い,その最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長する。
4 地域の実情に応じて,高齢者が,可能な限り,住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう,医療,介護,介護予防,住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される。
5 老齢,障害又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し,もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与する。
解説
正答:1
選択肢1:正しい
選択肢の記述は社会福祉法の内容です。
社会福祉法は、社会福祉事業が公正かつ適切に行われることを確保し、社会福祉の増進に資することを目的として制定されました。
社会福祉の対象それぞれに提供されるサービスについて、共通する基本的理念を定めた条文であるといえます。
社会福祉事業法→社会福祉法(2000年)の主な特徴
- 規制緩和(多様なサービス提供者の参入)
- サービスの多様性と質の向上(一部、競争原理のなかで)
- 情報開示や評価を努力目標とし、利用者の選択肢を増やす
- 苦情解決を行う運営適正化委員会の設置
- 権利擁護システムを整備してサービス提供者との対等性を図る
選択肢2:誤り
選択肢内の「障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を~」とあるとおり、これは障害者基本法の内容です。
同法第1条には「この法律は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり~」と規定されています。
選択肢3:誤り
選択肢の文のなかにある「国が生活に困窮するすべての国民に対し~」とあるとおり、これは生活保護法の内容であることが分かります。
生活保護法の第1条には「この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする」と規定されています。
選択肢4:誤り
これは、地域包括ケアシステムの定義です。
地域包括ケアシステムとは、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・生活支援が一体的に提供される連携体制を指します(厚生労働省 地域包括ケアシステム)。
選択肢5:誤り
これは国民年金法の内容です。
選択肢の文にあるとおり「老齢、障害または死亡によって~」とあり、それぞれ国民年金が「老齢基礎年金」「障害基礎年金」「遺族基礎年金」という形で給付を行っています。
出典・引用
第33回 社会福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)
参考文献