はじめに
母子生活支援施設は、児童福祉法に定められた児童福祉施設です。配偶者のない女子、またはそれに準じる女子とその子どもが入所して、生活を安定させ自立するために支援を受けながら過ごす施設です。
入所相談の窓口は地方に設置されている福祉事務所です。入所理由の約半数は「夫等からの暴力」であり、次いで「住宅事情」「経済事情」です。また、入所する世帯の母は、知的・身体・精神の障害を抱えている例は約20%程度となっています。
何らかの事情があり施設に入所する母子に対して、どのような支援を行っているのか、この施設の概要を知るとともに、女性の貧困の問題について考える良い機会としましょう。
この記事を読めば、これが分かる!
- 母子生活支援施設の概要(目的や特徴)
- 母子生活支援施設に入所する世帯等の特徴
- 同施設利用者に対する支援のあり方
参照した文献はこちら
第33回 問題095(社会福祉士国家試験 過去問題)
問題 95 事例を読んで,Z母子生活支援施設のL母子支援員(社会福祉士)の対応として,適切なものを 2つ選びなさい。
〔事 例〕
Mさん(28 歳)は夫のDVに耐え切れず,近所の人に勧められて福祉事務所に相談し,Aちゃん( 7 歳,女児)を連れてZ母子生活支援施設に入所した。Mさんには軽度の知的障害があり,療育手帳を所持している。入所後 1 か月が経過したが,Mさんは自室に閉じ籠もっていることが多い。また,他の入所者の部屋の音のことでトラブルとなったこともある。Aちゃんは精神的に不安定で学校を休みがちである。
ある日,Mさんは,「ここに居ても落ち着かないので,Aちゃんを連れて施設を出たい」とL母子支援員に訴えてきた。
1 Mさんの気持ちを受け止めた上で,これからの生活に対する希望を聴く。
2 母子分離を図るため,Aちゃんを児童相談所へ送致する。
3 Mさんには退所に関する意思決定は困難であると判断する。
4 退所の申出の背景にある施設での生活環境を探る。
5 すぐに福祉事務所に退所についての判断を仰ぐ。
解説
正答:1、4
選択肢1:正しい
ソーシャルワーカーは、Mさんが申し出た内容をまず受け止めます。
受容・傾聴を行い、共感的姿勢でMさんの現在の状況に関して聞き取りを行い、今後の生活に関する希望を聞き出すことが、よりよい支援につながります。
選択肢2:誤り
Mさんは母子分離を希望している訳ではありません。また、問題文を読む限りでは虐待の兆候は見受けられません。
本人の話や希望を聞かず、状況を正しく認識しないままに、一方的に母子分離の処置を行い、児童相談所へ送致するということは不適切であるといえます。
選択肢3:誤り
施設からの退所に関しては、本人の意思を尊重することが大変重要です。
何をもってMさんに意思決定を行うのが難しいのか、選択肢には書かれていませんが、本人の意思決定を無視するような、または一方的に意思決定が難しいと判断することは不適切です。
選択肢4:正しい
Mさんがなぜ退所を申し出てきたのか、その背景や経緯について確認することが必要でしょう。理由として、施設における生活環境に何か不具合が生じているのかもしれません。
ソーシャルワーカーとして、クライエント個人と置かれている環境のいずれにも介入するため、まず生活環境に着目し、情報収集することは適切だといえます。
選択肢5:誤り
Mさんの申し出の背景等を確認しないまま、すぐに福祉事務所へ連絡して判断を仰ぐことは不適切であるといえます。
まずはMさんの退所の意向に対して、受容・傾聴を行って話を聞きます。その後、共感的な姿勢で相談を受け、彼女の申し出にはどのような背景・経緯があるのかを確認し、必要な支援を行います。
出典・引用
第33回 社会福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)

参考文献
きちんと整理されているのでとても分かりやすく、効率よく覚えることができます!