はじめに
昨今、企業等で起きているパワーハラスメントが社会問題化しています。統計では、パワーハラスメントの被害に遭ったと回答した人が31.4%で、実に3.2人に1人という結果でした。
この記事で取り上げる「労働施策総合推進法」にて、企業等でハラスメントが起きないように予防したり、起きた場合に適切な対応を行う義務を、事業主に課しました。
科目「現代社会と福祉」でこの法律が取り上げられたので、過去問題の解説をしながら概要についてレクチャーします。
この記事を読めば、これが分かる!
- パワーハラスメントの実態、定義
- パワーハラスメント防止に関し、事業主が行う取り組みの例
- 労働施策総合推進法の概要
参照した文献はこちら
第33回 問題031(社会福祉士国家試験 過去問題)
次のうち、働き方改革とも関連する「労働施策総合推進法」の内容の説明として、適切なものを 2 つ選びなさい。
1 国は、日本人の雇用確保のため不法に就労する外国人への取締りを強化しなければならない。
2 国は、子を養育する者が離職して家庭生活に専念することを支援する施策を充実しなければならない。
3 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、必要な措置を講じなければならない。
4 国は、労働者が生活に必要な給与を確保できるよう労働時間の延長を容易にする施策を充実しなければならない。
5 事業主は、事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる労働者について、求職活動に対する援助その他の再就職の援助を行うよう努めなければならない。
(注)「労働施策総合推進法」とは,「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(旧雇用対策法)のことである。
解説
正答:3、5
選択肢1:誤り
この法律では、第4条にて外国人の適切な雇用機会の確保が図られること、雇用管理の改善の促進等が規定されています。
選択肢内にある「日本人の雇用確保のため」に不法に就労する外国人の取り締まりを強化する等の規定はありません。よって、誤りです。
選択肢2:誤り
この法律は、結婚・妊娠・出産を経たとしても子を養育する者の雇用継続を目指すものです。
よって、選択肢内にある「離職して家庭生活に専念する」ことを規定している訳ではありません。
選択肢3:正しい
同法第30条にて規定されています。事業主がパワーハラスメントの防止に向けて必要な措置を講じなければならないと義務付けています。
ちなみに厚生労働省は、パワーハラスメントを次のように定義づけています。
パワーハラスメントとは
- 優越的な関係を背景とした言動であって
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
- 労働者の就業環境が害されるものであり
- 1から3までの3つの要素をすべて満たすもの(出典:厚生労働省雇用機会確保・均等局)。
パワーハラスメント防止に向けた、事業主の取り組み例
事業主がハラスメントを防止するために、企業等で行う取り組み例を紹介します。
- ハラスメント防止に関する研修会、勉強会の実施
- 行為者への厳正な対処方針、処罰内容等の規定化
- 相談窓口の設置、相談への適切・迅速な対応
- 被害者への適正な配慮やプライバシーの保護
選択肢4:誤り
労働者が仕事とプライベートの両立ができるよう、同法では「国が労働時間の短縮、労働条件の改善(中略)労働施策の充実について総合的に取り組まなければならない」と規定されています。
時代の流れとしては、労働者がワークライフバランスを保つことができるように、国・企業等が努力するよう求められています。
選択肢5:正しい
同法では、事業主は、事業規模の縮小等に伴って離職をせざるを得ない労働者が求職活動が行えるように援助するよう努めなければならないと規定されています。
その他の再就職の時援助においても同様です(第6条第2項)。
出典・引用
第33回 社会福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)
参考文献