はじめに
私たちの生きる現代社会には、様々な調査で溢れています。最近ではWEBでアンケートを取ることが簡単になり、以前のように質問紙調査を行ううえで必要だった手間(時間、配布・回収の労力等)がかからなくなりました。
一方で、気軽にアンケート作成・回答ができるようになったことにより、調査を行う側が意図的に「誘導質問」を入れているケースが散見されるようになりました。
この記事では、「社会調査の基礎」の過去問題を取り上げ、質問紙作成上の注意点について解説します。
この記事を読めば、これが理解できる
- 質問紙を作成するうえでの注意点
- ダブルバーレル質問とは、どのような質問なのか
- ステレオタイプ用語とは、どのようなキーワードなのか
- どのような質問が誘導質問となるのか
参照した文献はこちら
第33回 問題88
質問紙の作成に当たっての留意点に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 一つの質問文で複数の事項を問うことは、複数の回答が同時に得られるので、質問紙の作成において望ましいと考えられている。
2 パーソナルな質問とは社会一般的な意見について尋ねる質問であり、インパーソナルな質問とは調査対象者自身の意識や行動について尋ねる質問である。
3 質問文を作成するときには、調査対象者に関心を持ってもらうために、一般的に固定的なイメージを持つステレオタイプな用語を使う必要がある。
4 社会的に望ましい結果を得るために、誘導的な質問をすることは質問紙の作成として適切である。
5 前の質問文の内容が次の質問文の回答に影響を与えないように、注意を払う必要がある。
解説
正答:5
選択肢1:誤り
1 誤り。一つの質問文で複数の事項を問うことは、「ダブルバーレル質問」といわれ、質問紙の作成において避けるべきです。
例を挙げます。あるレストランのテーブルにお客様アンケートが置いてあったとします。料理に対する客の満足度を測りたいため、店主が置いています。
そのアンケートのなかに「メインディッシュの味と香りはお楽しみ頂けましたか?」という設問があったとします。これこそ、一つの質問文で、2つのこと(味の良し悪し、香りの良し悪し)を聞いているダブルバーレルになります。
回答者が回答をしにくいだけでなく、回答を得られたとしても調査する側がデータの分析が困難となるため、調査を行ううえでは避けることが求められます。
選択肢2:誤り
2 誤り。パーソナルな質問とインパーソナルな質問がクロスして出題されています。
つまり、「パーソナル質問」とは、調査対象者自身の意識や行動について尋ねる質問を指します。一方で、「インパーソナルな質問」とは、社会一般的な意見について尋ねる質問です。
選択肢3:誤り
3 誤り。質問紙を用いた調査を行ううえでは、固定的なイメージを持つステレオタイプな用語を避けるべきです。
ステレオタイプとは、社会に広く浸透している固定的な概念やイメージのことを指します。動画で解説しているとおり、ステレオタイプは、「男らしい」や「女らしい」など、回答者によって捉え方が異なるばかりか、回答者が余計な偏見を持って回答してしまう恐れがあります。
選択肢4:誤り
4 誤り。誘導質問とは、調査者がある特別な意図を持って、回答を誘導的に発生させるようにすることを指します。
たとえ「社会的に望ましい結果を得るため」という目的があっても、質問紙調査を行ううえでは、誘導的な質問を避けるべきです。
選択肢5:正しい
5 正しい。前の質問文の内容が、次の質問文の回答に影響を与えることをキャリーオーバー効果といいます。
このキャリーオーバー効果を100%無くすことは難しいのですが、極力このような効果が出ないように質問紙を作成することが求められます。
参考・引用
・第33回 社会福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)
・リサーチとは リサーチ手法の全体像(株式会社リッフェル)
参考文献
きちんと整理されているのでとても分かりやすく、効率よく覚えることができます!