はじめに
労働者災害補償保険、いわゆる労災保険の対象は労働者です。労働者でありさえすれば、雇用形態は関係ありません。
正社員はもちろんのこと、契約社員や日雇労働者、パートタイム・アルバイトの人たちも労災保険の対象となります。
以下、詳しい内容を見ていきましょう。
この記事を読めば、これが理解できる
- 労働者災害補償保険の対象は、どのような労働者なのか
- 労働者災害補償保険において、労働災害・通勤災害の判定に関する原理、原則
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第33回 問題52
事例を読んで、労働者災害補償保険(以下「労災保険」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕運送会社で正社員として働いているFさんは、合理的な経路及び方法により通勤中、駅の階段で転倒し、負傷した。
1 Fさんの負傷は業務災害ではないので、労災保険の給付は行われない。
2 Fさんの雇用期間が 6 か月未満である場合、労災保険の給付は行われない。
3 Fさんが療養に係る労災保険の給付を受けられる場合、自己負担は原則 1 割である。
4 Fさんが療養に係る労災保険の給付を受ける場合、同一の負傷について、健康保険の療養の給付は行われない。
5 Fさんの勤務先が労災保険の保険料を滞納していた場合、労災保険の給付は行われない。
解説
正答:4
選択肢1:誤り
1 誤り。Fさんの負傷は業務災害であるといえます。なぜなら、事例文のなかに次のような記載がないためです。
- Fさんが通勤経路を外れた
- 非合理的な手段で通勤した
- 通勤中に私的行為をして経路から離脱した
もし、上記のようなことが事例内に書かれていれば、業務災害と判断されない可能性が高いので注意が必要です。
選択肢2:誤り
2 誤り。Fさんが雇用されていた期間は、労災の判定に影響しません。労働者でありさえすれば、雇われていた期間が短かろうと長かろうと、労災保険の被保険者となります。
つまり、雇われて始業した初日でも、10年間勤務している労働者でも、業務に起因する労働災害に遭った場合には、労働災害と認定されます。
選択肢3:誤り
3 誤り。労災保険の被保険者が、労災における療養の給付を受ける場合、被保険者の窓口負担はありません。
選択肢4:正しい
4 正しい。同一の負傷や疾病については、労災保険と健康保険の給付を同時に受けることはできません。
つまり、業務に起因する負傷や疾病の場合は、労災保険が適用されて、健康保険は適用されません。一方で、私的行為が原因の負傷・疾病には健康保険が適用されます。
なお、本来なら労災保険を適用して治療を受けなければならないのに、労災を隠すために健康保険を使うのは法令違反です。
選択肢5:誤り
5 誤り。労災保険の保険料は、Fさんの勤務先が負担します。
Fさんの勤務先が保険料を滞納していたり、納付したりしていなかった場合でも、労働者を保護する観点から労災保険の適用を受けられます。
出典・引用
第33回 社会福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)
参考文献
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